3.請負を基礎とする契約

請負契約とは、当事者の一方(請負人)が仕事を完成させることを約し、相手方(発注者)がその仕事の結果に対して請負人に

報酬を支払うことを約することによって成立する契約である。
今日、請負契約に該当する契約は、クリーニング、機会等の保守・修理、運送等数多くあるが、最も典型的な請負契約は建築請

負契約である。

4.委任を基礎とする契約
委任契約は、当事者の一方が法律行為をなすことを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって成立する契約である

。ただし、実行行為の処理を委託する場合も委任移管する規定が準用される。
実際には、1つの商人がこれらのうち2以上を兼ねていることも少なくない。そこで、保険業法、旅行業法、宅地建物取引業法
証券取引法等の、個別の業態に応じた法律において、これらについての規制が行われている。

5.寄託契約
寄託契約とは、受寄者が寄託者のためにある物の保管をする契約である。受寄者が目的物を受け取って成立する、要物契約であ

る。

6.保険契約
保険とは、同種の危険にさらされた多数の経済主体のそれぞれが、それぞれの統計的計算上の危機率に応じた出損をなすことに

より共同的備蓄を形成し、現実に需要が発生した経済主体がその備蓄された資金から給付を受ける方法で需要を充足する制度の

ことをいい、不確定リスクを除去・軽減を行うための共同の仕組みといえる。

7.知的財産権に関する契約
特許権・商標権などの知的財産権は、現代の企業活動上、大変重要な権利となっている。正当な知的財産権の保護は、各個人・

企業の投下資本回収、またさらなる知的進歩に大きく貢献するとともに、各産業の活性化、さらには知的財産そのものの市場の

発展にも繋がるもので、将来の経済を形作る不可欠な要素となる。

8.業務提携契約
消費社会の高度化によって、商品の多様化・高度化や流通市場の拡大化が進んでいる。このような環境の変化に伴い企業間の競

争はますます厳しさを増し、競争に打ち勝つ企業経営には様々な戦略が必要になってくる。企業の経営戦略としては、企業の大

規模化・多様化・合理化などが考えられるが、これらを実現する経営戦略手段の1つとして、業務提携がある。企業は会社を拡

大させたり、多様な分野に事業を広げたり、会社内のリストラを進めたりしているが、そのような流れの中で業務提携が行われ

ている。
業務提携の内容は、代理店・特約店契約、販売委託契約が特許権の実施許諾契約(技術提携)などを含めて、さまざまの型があ

る。

(1)生産業務の提携
各企業は、すべてを自前で提供するわけではない。もし、それを行おうとすれば人的にも金銭的にも、非効率的といわねばなら

ない。そこで、実際は、それぞれの企業同士で、ニーズに合わせて、製品・部品の生産・加工・供給に関して、頼りあうことに

なる。このときにそれぞれの製造業務を連動利用するために結ばれるのが、生産業務の提携である。相互に頼りあう関係で、一

定の期間、継続しなくては、提携とはいえない。
鄯 OEM契約
OEM(Original Equipment Manufacture)契約は、生産事業の提携の一類型であり、発注者のブランドで販売する製品を受注者に

供給させる契約である。
OEM契約には、発注者側は生産のノウハウのない分野の製品についても自社ブランドでの販売を行うことができ、不採算の際に

は容易に撤退できるというメリットがある。受注者側は売れ残りのリスクを負うことなく生産を行うことができるメリットがあ

る。ただし、消費者のブランドに対する信頼性を裏切る可能性があるという点、企業責任をあいまいにするという点では、長期

的に見たときに企業イメージにマイナスになるのではないかというデメリットも指摘されている。
また、OEM契約には、様々な契約内容のものがあるので、その法的性質を一律に定めることはできない。よって、OEM契約の法的

性質は、個々のOEM契約ごとに考慮され、特約のない部分には、類似の契約の規定が補充的に適用されることになる。
例えば、?発注者が、受注者仕様の製品を購入して発注さhの商標をつけるだけの場合は、売買契約的な法的性質を持つOEM契約

ということができ、特約なき部分につき、売買契約の規定が適用されることになる。また、?受注者が、受注者仕様の製品を生

産・納品して発注者の商標をつける場合は、請負契約的な法的性質を持つOEM契約ということができ、特約なき部分につき、請

負契約の規定が適用される。
?商標の管理
OEM契約では、発注者が自分の商標をつけて、自分の商品として販売する。そのため、商標の扱いが極めて重要となる。製品・

包装においての商標の表示の仕方を明確に規定して、受注者が発注者の指定した通りに商標をつけられるようにする必要がある

。また、受注者の商標の無断流用は明確にこれを禁止しなくてはならない。
?取引数量の決定
取引数量の毛低は、発注者・受注者の双方にとって、安定受注・発注の確保ができる反面、販売見込み違いによる在庫リスクが

生じる。そのため、取引数量に関しては、慎重を期す必要がある。
?発注者の製造物責任
OEM契約では、商標を所有する発注者も「製造業者と誤認させるような表示をした者」として製造物責任法(PL法)上の責任を

問われる可能性がある。
発注者は被害者に支払った賠償金につき受注者に求償することができるが、その旨を契約の際に明確に規定しておく必要がある


鄱 コンピュータソフトウェア開発の委託
現在、ビジネス上コンピュータは必要不可欠であり、それを有効利用した業務運営は、コスト削減や効率化への大きな近道とい

える。そのとき活躍するのが、便利なソフトウェアである。その中身は、自社で作る会社もあるが、人員や費用の面で、負担が

大きい場合が多いといえる。そこで、外部に託した形で、発注者の会社に合わせたソフトウェアの開発を委託するケースが増え

ている。このようにソフトウェアを外部に発注することをソフトウェア開発委託契約という。ソフトウェア開発委託契約も生産

業務提携といえる。法的性質は生産業務提携と同様である。
提携契約が求められるのは、例えば、会社内部の情報に比較的深くコミットする機会が多く、また、メンテナンス等の必要性か

ら、単に作るだけで終わらないことも多いことなどから、取引が長期的・継続的となる要請が強いといえるからである。
ソフトウェア契約委託契約に関しては、次のような事柄が問題となる。
?成果物たるソフトウェアの著作権
著作権については契約書面でしっかり定めることが重要である。関与度合いよりも、委託企業と受託企業の実施雨滴関係で決ま

り、現実には委託企業に帰属することが多い。
なお、著作権の帰属だけではなく、開発したソフトウェアの使用権をも定めておく必要がある。著作権が委託者に帰属するよう

に定めたとしても、受託者にそのソフトウェアの使用を自由に認めてしまっては、実質的には委託者の権利が十分に確保されな

くなってしまうからである。委託者と受託者の権利が十分に確保されなくなってしまうからである。委託者と受託者の権利を調

整するには、著作権と使用権の両者を同時に考慮する必要がある。
?ソフトウェア開発委託契約の業務範囲
完成後のメンテナンスや、発注企業の従業員への講習などのニーズも高く、実際どこまでが痛く範囲なのかについては、契約時

に明確にしておく必要がある。
?受託企業に開示された委託企業の情報の保持
委託企業のニーズにかなったソフトウェア開発のために、受託企業は委託企業の保有する営業秘密等と接しざるを得ない場合も

多くなる。そこで、機密保持条項を事前に契約で定めておく必要がある。
ただし、ソフトウェア開発に伴う、受託会社担当者の記憶に残るアイディア、ノウハウ、コンセプト等(いわゆる残留情報)に

ついては、守秘義務の対象から免除されることも多い。

(2)合弁契約
鄯 合弁事業と合弁契約
企業等が連携・共同して事業を営む形態には、民法上の組合、会社、その他の社団等の多種多様な団体が考えられる。このよう

な共同事業企業体の形態の1つに合弁事業がある。合弁事業の前提として締結されるのが合弁契約である。これは一般的に、比

較的少数の当事者が特定の営利事業を、共同で行うことを目的とした契約である。その主な目的は、合弁事業における資本・組

織・運営等に関する当事者間の合意である。
合同契約では、出資比率、役員比率、代表者の運出方法、組織形態(組合型・会社型、どういう会社形態をとるのか)、運営補

法、契約解消時の処置などが決められている。
合弁契約は、それによって設立される企業体の形態によって、大きく組合型(パートナーシップ)と会社型(株式・合名・合資

・合同の各会社)とに分けられる。前者の合弁事業には民法の組合に関する規定が適用されるが、後者の合弁事業には会社法

理論が適用され、その設立は会社の設立手続によらなければならな。したがって、後者の場合、合弁契約によって規定される事

項のうちのある部分は、設立される合弁会社の定款に規定される。
鄱 合弁事業における出資の問題
合弁事業に関しては、各出資者が運営に当たって、どこが主導権を取るかが問題になる。
この場合、合弁会社への出資割合で決まることが一般的である。株式会社形態のときには、全株式の51%以上を保有している

会社が、会社の全経営についての意思決定を担える。このような場合に、少数派が、不当に不利な立場に立たされないようにす

るために、少数派の利益に配慮した規定(業務執行上の拒否権の設定、一定数の取締役の確保)が設けられる。
ちなみに、出資率を同じにすることは、責任の不明確化につながると考えられ、基本的に行わない。

9.電子商取引
電子商取引とは、広く情報通信技術を用いたビジネスをいう。
例えば、電子商取引では電子メールを用いて商品の発注・受注が行われる。またホームページを用いて広告をすることができる

。さらに最近では、銀行取引や決済をインターネット上で済ませることも可能となった。
電子商取引では、新しい技術や発想が多く用いられる。このことから、電子商取引はビジネスのあり方を大きく変え、さらに新

しいビジネスチャンスを拓くものだといえる。
一方、ITの急速な発展に法的なルール整備が追いついておらず、何か問題が発生した場合に既存の法的ルールを適用しても妥当

な解決を図ることができない場合が多くある。また、気が付かないうちに加害者や被害者になってしまう可能性もある。そのた

め、当事者が安心して電子商取引に参加できる法環境の整備が求められている。

(1)インターネットを利用した電子商取引の特定とそれに伴う法的問題
鄯 契約の成立
契約成立時には、申込と承諾という双方の意思表示が合致することが必要である。電子商取引においても、この点は変わらない

。そして、インターネットを利用した契約では、「隔地者間の契約」として、承諾の発信時に契約が成立するのが原則である(

発信主義)。
しかし、発信主義は、郵便を利用するような時間のかかる制度を前提に設けられた制度であり、瞬時に情報の伝わる電子商取引

には不向きな制度といえる。
そこで電子消費者取引法が制定され、電子消費者契約における契約成立の時期について、到達主義を採用した。すなわち、電子

メール等で契約の承諾通知を行う場合、承諾の通知が申込者の元に届いた時点で契約が成立することになる。
鄱 店委任者との取引
未成年者の法律行為は、法定代理人の同意がない限り取り消される可能性がある。特に、電子商取引では相手の姿が見えないの

で、突然、未成年を理由に契約が取り消されて多大な損害を被る危険がある。
業者としては、まず、きちんと相手の年齢を確認するべきである。年齢確認のプロセス(画面上に年齢確認のフォームを設ける

べき)などを経ていれば、仮に未成年者がうそをついた場合でも、詐術とされる可能性があり、取消のリスクを軽減することが

できる。
また契約の後、相手が未成年者であると判明した場合、業者の側は保護者に対して、追認するか否かの確答を催告することがで

きる。この催告に対して確答がない場合は、追認したものをみなされることになる。
鄴 電子商取引における錯誤
キーの誤操作で、消費者が思わぬ取引をしてしまうトラブルが頻出している。そこで、消費者保護のために、電子消費者契約に

おいては、事業者が操作ミスを防止するための措置を講じていない場合には、消費者に重過失があっても、消費者側からの錯誤

無効の主張を認めている。
鄽 電子商取引と各種消費者保護法
電子商取引にも、消費者保護法、特定商取引法等、各種の消費者保護のための法律が適用される。
・店舗側が契約締結の勧誘をするに際して、消費者に対して不実告知(重要事項について事実と異なることを告げる)、不利益

事実の不告知等がなされ、消費者が重要事項を誤認して契約を結んだ場合、消費者はその契約を取消せる。
消費者契約法において定型化された消費者に不利益な事項(特に損害賠償の定めについて事業者に不当に有利で消費者に不当

に不利なもの)に該当する場合には、その契約は無効となる。
・インターネット広告について一定事項の表示義務が課され、誇大広告が禁止される。
・カード決済が行われ、これが割賦販売の割賦購入あっせんに相当する場合、同法の適用を受け、販売時には書面(電子データ

でもよい)を消費者に交付しなければならない。
酈 本人確認の問題
改ざんの有無を確認し、また本当にその人によって作られたものかを確認するために用いられるのが電子署名(電子認証)と呼

ばれるものである。一般的な取引では、この確認を印鑑やサインで行ってきた。しかし、電子的なデータにおいてはこうした方

法をとることができない。電子署名はこれを可能にしようとする技術である。
電子署名については、「電子署名及び認証業務に関する法律」が制定され、電子署名によって署名された文書については、真正

な成立が推定されることとされている。

2.リース契約(1−49)

(1)リース契約とファイナンシャル・リース
リース契約とは、本来は賃貸借契約のことである。しかし、今日では金融取引の一形態として行われる、ファイナンシャル・リースを指すことが多くなっている。
ファイナンシャル・リースは、建設機械・医療器具などについて行われるもので、大体次のような仕組みになっている。
ファイナンシャル・リース(ファイナンス・リース)では、まずユーザーの希望に従ってリース会社がサプライヤーから物件を購入し、ユーザーに賃貸する。ユーザーはリース外車に賃料を支払い、物件を使用収益する。
これは一見、リース会社が、単に物件を買い付けてユーザーに貸し与えているだけのように見える。しかし、ファイナンシャル・リースは、経済的には、金融を目的とするものである。しかし、ファイナンシャル・リースは、経済的には、金融を目的とするものである。すなわち、実際に商品の選定にあたるのはユーザーであり、商品を利用するのもユーザーなので、実質的な買主はユーザーだといえる。リース会社は、形式的には買主であるが、実質的には、ユーザーに対し購入資金を融資する借主の地位にあり、賃料の名目で貸付金の返済を受けているものと捉えることができる。
なお、ファイナンシャル・リースは物融とも称される。

(2)ファイナンシャル・リースの効用
ファイナンシャル・リースを利用することによる、ユーザー・サプライヤーそれぞれのメリットは、次のようなものである。
鄯 ユーザーにとってのメリット
?実質的金融効果
動産賃貸借でありながら、実質的に金融を得たのと同様の効果を得られる。また、目的物の所有権はリース会社に留保されているので、これが担保の機能を果たし、別に担保を提供する必要がない。
?節税
リース料は経費扱いとなって損金処理ができる。また、リース期間は通常、法定耐用年数未満で定められるので、いわば減価償却を短期間で行うのと同様の効果が生じるため、節税効果も期待できる。
?陳腐化リスクの回避
リース期間が満了すると、直ちに他の新しい設備を導入できる。これは革新技術の成果をすばやく導入したり(コンピュータ等)、定期に模様替えをしたりする(ホテルなど)ために大変便利である。
鄱 サプライヤーにとってのメリット
ユーザーにメリットがあることを強調して販売を促進できる。また販売代金をリース会社から短期間で回収できる。

(3)リース契約を巡る問題
鄯 物件の瑕庇を担保しない旨の特約が置かれる。一方で、サプライヤーのユーザーに対する瑕庇修補義務が特約として定められるのが通常である。
また通常の賃貸借契約であれば、賃貸人が物件の保守・修繕義務を負うが、ファイナンシャル・リースでは、ユーザーがその責任を負う。これは、物件がユーザーが選んだものであり、ユーザーは通常その取扱に精通していること、それに対して、賃貸人であるリース会社には実質保守能力がないこと、またリース料にはリース物件のメンテナンス・修繕費用は織り込まれていないことなどによる。
鄱 契約の解除
リース契約では、ユーザーからの中途解除をすることは通常認められていない。これは、リースの本質が金融であり、実質的にはリース料の支払が貸付金の返済としての性格を有するためである。
一方、ユーザーのリース料支払いが滞る債務不履行があった場合、リース会社側から契約を解除することは可能である。解除されると、ユーザーは物件の返還義務及び損害賠償義務を負担する。
ただ、リース料不払いのリスクを回避するため、あらかじめ数か月分のリース料相当額を、前払いリース料という名目で担保として受け取ったり、ユーザーの経営状態の悪化しているような場合は、通知義務を課したりすることが行われている。

(4)リース契約終了後の処理
リース契約期間満了後の処理は、?ユーz−亜が再びその物件を借り直す(再リース)、?物件をリース会社に変換する(契約終了)、?ユーザーが物件を買い取るのいずれかである。
?の場合、リース料は原リース料の10分の1〜12分の1程度の低額になることが多い。これは、リース業者にしてみれば、現リースの契約の終了によって、既に投下資本と利益を回収しているといえるからである。この金額を下回った場合、当該物件がユーザーに売り渡されたと、税務上、認定されることもある。

江島健太郎 IT哲学「自分で自分をクビにするために働く」

Computerworld June 2008より

1997年−当事、ハードウェア・ベンダーからITサービスの会社へと大変革を遂げつつあった外資系ベンダーの神速採用面接を受けたとき野出来事である。面接も終盤にさしかかり、「弊社について、何か聞きたいことはありますか?」と聞かれたとき、私はすかさずこのような質問をした。

「IT業界というのはとても奇妙な業界だと思います。IT業界が目指す理想の世界が訪れるとき、つまり、ITのイノベーションによってだれもが個人で簡単に情報にアクセスできる時代が来るとき、今、御社が目指そうとしている、ITのソリューションを販売するという商売はなくなってしまうのではないでしょうか」
「自分で自分をクビにするためにイノベーションを起こすという、とても不思議な矛盾を抱えた仕事だと思うのですが、御社は50年後の自社がどのような姿になっているとお考えでしょうか」

今にして思えば、わざと答えのない問いを投げかけることで相手を困らせてやれという、ナイーブな若者にありがちな態度だったと少し反省している。しかし一方で、この問いは今も問い続ける価値のある問いだと考えている。

あるテクノロジーが、もしプロのエンジニア集団に何百万円も何千万円も出してカスタマイズしてもらわないと使えないようなものなら、それはそのテクノロジーが未熟であることにほかならない。カスタマイズをしなくても簡単に使えるように、絶えず進化していくのがイノベーションの宿命であり、また、ユーザーのほうもテクノロジーに対するリテラシーを次第に高めていき、やがてそれらが交差する瞬間があってくる。
しかし、そうしたイノベーションの行き着く先は、プロのエンジニアが不要になるということでもある。

かつて、PCを買ってきてネット回線を引いてあげるだけでソリューションと呼んで商売になっていた時代があった。今では考えられないことだ、と読者の皆さんは笑うかもしれない。だが、今のソリューション・ベンダーの仕事を未来の世界の住人たちが振り返ったとき、同じ感想を持たないと言えるだろうか。
情報技術は、どこまでも個人の能力を増幅する方向へと進化し、やがて空気のような存在となり、社会の総セルフサービス化を加速させていくだろう。IBMからマイクロソフト、グーグルへという情報重鎮の交代劇は、大企業から中小企業、そしてとうとう個人へと、ITの主たるターゲットが変化してきたことを意味しているのだ。

ソリューション・ベンダーは今、正に自分で自分をクビにする大変革の時期が到来しているはずなのに、このことに自覚的なベンダーが驚くほど少ないように思われる。これははたして杞憂だろうか。

【第4章 取引関係 第一節 さまざまな取引】

1.売買取引
(1)売買取引の類型
会社が関係する取引の中心となるのが売買取引である。商品を売ったり勝ったりするのは、すべてこの取引に含まれる。

(2)売買取引の特徴
企業間での製品や原材料の売買取引では、固定された取引の相手方との継続的取引が中心である。
これは安定的な商品供給が期待でき、商品の仕様に関する詳細な指示が可能であるという、両当事者にとってのメリットがあるからである。

(3)契約の成立
鄯 契約準備段階の信義則
契約は、申込の意思表示と承諾の意思表示が合致することによって成立する。
しかし、通常の契約関係は、交渉を通じて徐々に形成されていくものであり、両当事者の意思表示によって突然出現するものではない。契約交渉という準備段階であっても、当事者間に一種の信頼関係が形成され、互いにこれを裏切ることなく、誠実に交渉を行う義務が発生するものと考えられる。
鄱 一時的取引と継続的取引
一時的取引の場合、契約成立のためには、取引の都度、申込と承諾の意思表示が合致する場合がある。しかし、継続的取引では、より迅速・簡便に契約が成立するように工夫されているのが通常である。
鄴 申込を受けた商人の受領物品保管義務
商人は自己の営業の部類に属する契約の申込を受け、それとともに受け取った物品がある場合、申込を拒絶した場合でも、その物品を保管する義務を負う(受領物品保管義務)。ただし、物品の価格が保管費用に足りないとき、または商人がその保管により損害を受けるおそれがある場合はそうした義務を負わない。

(4)契約書の作成
法律上、契約書を作成しなくても売買契約は成立する。しかし、トラブルを回避するためには取引条件を明確にする必要があり、そのためには契約書を作成しておくことは重要である。契約書に記載すべき事項としては、次のようなものがある。
 ?売買の目的物の内容
 ?引渡条件
 ?売買代金額・支払条件

(5)債務不履行
売買取引では、買主の代金不払いのほか、買主が売買目的物の受領を拒む、買主が目的物の引渡しをしない、契約の趣旨に沿わないものを引き渡すといったトラブルが生じることがある。このように、債務の本旨に従った履行が無い場合を債務不履行と呼ぶ。
債務不履行という語は、?本旨に従った履行がなされないすべての場合をさす場合と、?特にその不履行が債務者の責に帰すべき事由によって履行されない(できない)ことをさす場合(狭義)とがある。

(6)代理店・特約店契約
鄯 取引の特徴
わが国では、代理店・特約店(他に販売店・取扱店・販売特約店)などあまり区別して用いることはない。しかし、厳密には、代理店と特約店(ないし販売店)は区別することができる。
代理店とは「Agency」(代理人)であり、本人のために代理・媒介を行う。代理店の営業活動の結果、契約の当事者となるのは、本人(Principal)とその顧客である。代理店は、契約締結を代理・媒介することによって決められた手数料を受け取り、これが代理店の利益となる。例えば、保険代理店や旅行代理店などが、この代理店の典型である。
特約店(ないし販売店)と呼ばれる者は、本人から完全に独立した商人で、本人のために代理・媒介をするわけではない。特約店は、一定の特約店ないし販売店契約(Distributorship Agreement)を締結し、この契約に定められた条件。方法で商品を仕入れ、自己の名義と計算で販売する。特約店の営業活動の結果、契約の当事者となるのは、特約店(ないし販売店)と顧客である。特約店(ないし販売店)の利益は、仕入れ価格と販売価格の差額となる。
わが国では、代理店といいながら、実は単なる特約店である場合が多いようである。英語でははっきり区別されるので(AgentとDistributor)、国際取引で安易にしようすることは慎むべきである。
鄱 フランチャイズ契約
特約店の特殊な契約としてフランチャイズ(Franchise)がある。フランチャイズ契約は、フランチャイジー(加盟店)とフランチャイザー(本部)との間における継続的取引契約である。
フランチャイズ契約では、?フランチャイジーフランチャイザーの商標、サービス・マーク等を利用して、同一イメージのもとに営業を行う権利を与えられ、?フランチャイジーフランチャイザーから一定のノウハウ・アドバイス及び商品の供給等を受け、?その見返りとしてフランチャイザーが一定の対価(ロイヤリティー、権利金)を受け取る、という仕組みになっている。
このシステムを利用すると、フランチャイザーは、フランチャイジー保有する土地、建物等の資源を利用しつつ、少ない資本で他店化を図ることができる。一方、フランチャイジーにとってもフランチャイザーの豊富なノウハウや強力なブランド力を背景に安定した事業を営むことが可能になる。
フランチャイズシステムは、コンビニエンスストア、居酒屋などの小売業・サービス業で近年広く見られる形態となっている。
鄴 売買型の特約店契約
特約店を利用する場合、商品供給業者と特約店の間に反復・継続的な商品取引契約が生じる。このような継続的商品取引関係では、まず基本契約が締結され、その後の個別契約関係は、基本契約に基づいて簡便に処理されることになる。
基本契約に定められる条項としては、次のようなものがある。これらの契約条項のなかには、テリトリー条項、一手販売権、再販価格条項等、独占禁止法に抵触しかねないものも存在するので、注意が必要である。
こうした基本契約書は、通常、商品供給業者があらかじめ浮動文字で作成した雛形が利用される。商品供給業者は、同種の取引をいくつも締結するので、あらかじめ雛形を用意して定型的に処理することが便宜だからである。その意味で基本契約書は約款的性格を有する場合がある。
しかし、こうした雛形の利用は、相手方(特約店)にとって不利な条項が一方的に設けられるおそれがあるという問題をはらんでいる。あまりに一方に不利な条項については、契約自由の原則を修正として、その効力が否定されることがある。

(7)委託販売契約
委託販売契約は、商品供給者(委託者)が販売担当業者(受託者)に商品の販売を委託し、これに対して商品供給業者が報酬(手数料)を支払うことを約する契約である。販売担当業者は自ら当事者として顧客と契約を締結するが、その結果生じた損益は商品供給業者は自ら当事者として顧客と契約を締結するが、その結果生じた損益は商品供給業者に帰属する。
いたく販売契約は、商品供給業者が販売担当者に、商品の販売を委託するもので、委任契約の一類型である。この販売担当業者は、「問屋」にあたる。
問屋とは、自己の名をもって他人のために物品の販売または借入をなすことを業とする者である。すなわち、問屋では、委託者のために、自分が契約当事者となって自分の名義で契約を締結し、問屋と委託者の内部関係において、契約の効果が委託者に帰属する。
問屋を利用すると、委託者は自ら契約の当事者にならずに(問屋のノウハウや人脈を利用して)、実質的に契約当事者になったのと同一の効果を手に入れることができる。
代表的な問屋としては、証券会社を挙げることができる。

(8)消費者契約
企業(商人)が直接消費者へ商品やサービスを販売、提供する取引を消費者契約という。
消費者契約においてはさまざまな特別法が制定され、消費者の利益保護が図られている。それでもなお足りない場合、判例公序良俗や信義即などの一般条項を用いて解決している。
契約は、原則として申込みと承諾の合致があったときに成立する。契約書の作成も原則として不要であり、いったん契約が成立すれば、当日はこれに拘束される。
しかし、消費者契約においては、特別な考慮が必要となる。
鄯 クーリング・オフ
消費者契約のうち、割賦販売及び訪問販売については、一定の場合(指定商品について契約した場合で、一定期間内)に消費者が契約申込の撤回あるいは契約の解除(クーリング・オフ)を行うことができる。
割賦販売・訪問販売の業者は、申込書面または契約書に、赤枠の中に8ポイント以上の赤字の活字によって、消費者にはこの権利がある旨、記載しておかなければならない。
鄱 約款
消費者契約も私法上の契約であり、当事者の合意によって契約は成立する。消費者契約においては、予め企業側が作成した約款(普通取引約款)が契約の内容として用いられることが通常である。
このような消費者契約においては、ほとんどの場合契約条件についての個別的な細かい交渉の余地なく、すでにできあがった契約条件をそのまま受け入れるという形で成立する。また、ほとんどの場合、消費者は約款の内容について感心さえない。
約款は企業側が一方的に、自らに有利なように作成し、それによって消費者が不利益を被る場合も少なくない。そこで、不当・不公正な内容をもつ約款に対して消費者に適切な保護を与えることが必要になる。

【第三章 第6節:著作権】

1.著作権法(1−40,2−68)
著作権法は、著作権の権利・著作権の権利に隣接する権利を保護することによって著作権の創作活動を促進するとともに、権利保護と公正な利用の調和を図ることで、文化を発展させることを目的としている。
著作権法にいう著作物とは、?思想または感情を、?創作的に、?表現したものであって、?文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものをいう。例えば、単なるデータは事実の羅列に過ぎないため??を満たさず著作物にあたらない。しかしデータもデータベース化され情報の選択、配列または構成に創造性が認められる場合には、著作物にあたる。なお行政機関の発する告知、訓令や通達などは公衆に対して周知徹底させる必要があるため、著作物にあたらない。
著作権法にいう著作者とは、著作物を創作する者をいう。なお法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く)で、その法人等が自己の著作の名義の下に講評するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とされている。

2.著作権著作者人格権(1−41,2−69)
著作者には、著作権著作者人格権が認められる。両者は、特許法などと異なり、創作時に発生し登録を要しない点では共通する。ただ前者が財産権なのに対して、後者は人格権という違いから種々の取扱いの相違がある。たとえば著作権は他人に譲渡できるのに対して、著作者人格権一身専属権なので譲渡できない。また著作権は著作者の死後も50年は存続するのに対して、著作者人格権は著作者の死亡により消滅する。
著作者自身が著作物を上映したりすることはまれなので、著作権の実際上の意義は、他人の利用を禁じたり、他人に利用させることにあるといえる。ただし、著作権は、指摘利用のための複製、妥当な範囲の引用、図書館や学校その他の教育機関における複製、時事問題に関する論説の転載等においては、その保護が及ばない。
著作権人格者は、?公表権、?氏名表示権、?同一性保持権からなる。まず公表権は、著作物自体の公表の有無を決定する権利である。氏名表示権は、著作物に著作者の氏名を表示させるか否かを決定する権利である。同一性保持権は、著作権の内容及び題名を無断で変えさせないようにする権利である。

3.共同著作権と共同著作物の著作者人格権(1−42,2−70)
(1)共同著作物
共同著作物とは、2人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して、個別的に利用することができないものをいう。共同著作物では、著作者人格権は、著作者全員の合意によらなければ行使することができない。また、共同著作物の著作権を行使するにあたっても著作者全員の合意が必要である。
しかし、これらの場合に全員の合意を得ることは必ずしも容易ではない。そこで、著作権法は、信義に反する場合、正当な理由がない場合には、合意の成立を妨げてはならないとしている。

(2)共同著作権
著作権が、持分の譲渡や相続により複数の者に帰属した場合など、著作権の共有が生じることがある。このような場合にも行使や持分の譲渡は全員の合意によらなければすることができない。また、正当な理由がない場合には、合意の成立を妨げてはならない。

4.著作権の利用許諾(1−43,2−71)
利用の許諾とは、著作権者が対価の支払いと引き換えに、他社に対して、当該著作権の利用を認めることをいう。
許諾には、著作権者が第三者に重ねて許諾しないことを約する独占的利用許諾と、単に著作権を利用することを認めるだけの非独占的利用許諾とがある。
著作権の利用の許諾を受けた者は、著作権者の承諾が無ければ、その地位を第三者に譲渡することができない。
出版社が著作権の出版を引き受けようとする場合、出版許諾契約を著作権者と締結する方法がある。しかし、出版許諾を受けただけでは、違法に出版を行う第三者に対する差止請求が認められず、また損害賠償請求権も困難であるとされている。出版を専有しようと考えるときには、出版権を設定することが必要になる。

5.出版権の設定(1−44,2−72)
著作物を文書や図画として出版したい者は、著作権者など複製権を有するものから出版権の設定を受け、頒布目的で当該著作物を複製する権利を専有することができる。
出版権は、独占的権利である。出版権が設定された後は、複製権者も自分で出版したり、第三者に出版させたりすることができなくなる。出版権が登録されると、第三者に対抗することができる。

6.著作権の譲渡(1−45,2−73)
著作権は、その全部または一部を譲渡することができる。なお、譲渡に際し、翻案したりする権利、二次著作物の利用に関する原著作者の権利を譲渡する旨が特掲されていなければ、譲渡者に留保されたものと推定される。したがって、これらも含めて譲渡を受けるときには、はっきりとその旨を契約に示す必要がある。

7.著作隣接権(1−46,2−74)
実演か、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者の4者は、著作物の公衆伝達に重要な役割を果たし、かつ著作物の創作に準じた準創作的な行為を行うため、著作権に準じた著作隣接権により保護される。

8.著作権の侵害とその救済(1−47,2−75)
いかなる行為が著作権侵害となるかについては、著作権法には明確な定義規定がないが、著作権者の許諾があるなどの正当な理由がないのに、権利の目的物を利用する行為と解するのが一般的である。
著作権の侵害があるときは、民事上のみならず刑事上の責任を追及される。
具体的には、次のような行為が著作権の侵害にあたる。
?頒布目的で侵害物を輸入する行為
?侵害物を情を知って頒布し、また頒布目的で所持する行為
?プログラムの侵害物を業務上使用する行為
?故意に虚偽の権利管理情報を付加する行為
?故意に権利管理情報を除去・改変する行為
?情を知って、??の著作物を頒布する等の行為
?著作者の名誉または声望を害する方法によりその著作物を利用する行為
このほか、複製、上演、演奏等を、正当の理由がないのに行えば当然、著作権の侵害となる。

9.コンピュータ・プログラムの著作権(1−48,2−76)
コンピュータ・プログラムも著作権法の保護対象である。ただし、著作権法の保護対象となるのは、プログラムの表現であり、プログラムの表現であり、プログラムのアイデア(プログラム言語・規約・解法)の部分は、著作権法でなく、特許法で保護される。したがって、アイデア自体が模倣されても、表現形態が異なれば著作権侵害を問うことは困難である。

【第三章 第5節 商標権】

1.商標法(1−35,2−63)
特許法の対象である発明などは、産業上利用できる創作物であり、それ自体に価値がある。これに対して商業法の対象となる商標は、商品ないしサービスに使用されるマークにすぎず、それ自体には価値はない。ただ商標には、?他の物やサービスと区別する識別機能、?商品などの出所が同じことを示す出所表示機能、?商品の品質が同じことを示す品質保証機能、?公告機能などがある。よって、同一の商標を継続的に使用していると、商標は業務の信用を示すようになる。このような商標の独占的使用権を認めることは、商標権者の保護となるだけでなく、消費者にとっても商品などの品質を予想できるのでメリットとなる。そこで商標法は、商標の保護を図っている。

2.商標権の設定(1−36,2−64)
商標権は、特許庁に出願をし、審査を経て、商標登録原簿に登録されることで発生する。商標権者には、登録商標を独占排他的に使用できる専用権と、他人が登録商標の類似範囲の商標をしようすることを禁止することができる禁止件が認められる。禁止権の対象である類似の範囲は、商標自体の類似性とそれが使用される商品・役務の類似性と2側面から判断される。特許庁の審査基準によれば、商標の類似性は商標の外観、呼称及び観念のそれぞれを総合的に考慮することで判断するとされている。
商標権は、設定登録の日から10年間存続する。ただ特許権などと異なり、商標権は何度も更新登録できるので、保持し続けることができる。
業務上の信用の標章となった商標を期間経過後に誰でも自由に使用できるとすると、消費者が商品・サービスの内容を混同誤認して不測の損害を被る可能性があるからである。
なお、商標権は先願主義をとっているので他人が同一または類似の商標について出願していると登録できない。また出願に係る商標が、識別力を欠く商標(例えば指定商品または指定役務の普通名称や慣習商標、指定商品の産地・品質・原材料・効能等または指定役務の提供場所・質・効能等を表示するにすぎない名称等)は登録できない。
商標権者は、商標権侵害者に対して差止請求、損害賠償請求等を行うことができる。また、商標権侵害者は刑事罰の対象となる。

3.不使用商標・防護商標(1−37,2−65)
商標は、それ自体には価値があるものではなく継続的に利用されることで価値を生じるものである。よって長時間使用されていない商標には保護に値する価値がないといえる。そのため3年以上使用されていない商標に対しては、誰でも登録の取消を請求できる。
これに対して、商標は、継続して使用され周知性。著名性を獲得するごとに業務上の信用を標章としての価値を高めていく。そこで著名な商標については防護標章登録を受けることができ、非類似商品・サービスにまで禁止権を及ぼせる。

4.地域団体商標制度(1−38,2−68)
平成17年の商標法改正により、これまで全国的に知名度を有するなど、一定の要件を満たさなければ認められていなかった地域名と商品名からなる商標の登録について、より早期の段階で地域団体商標として登録を受けることが可能となった。これによって、地域名と商品名について、例えば、複数都道府県に及ぶほどの周知性を得るに至った場合には、地域団体商標としての登録が認められる。

5.類似の知的財産権(1−38、2−67)
業務上の信用の標章となる知的財産権には、商標権の他に、?不正競争防止法上の商品等表示、?商標・会社法上の商号に関する権利がある。
不正競争防止法は、商標法のように登録によって保護されるというのではなく、一定の類似的行為を不正競争として規制するというかたちを取っている。これに対して商号は登記という手続を経ることによって特別の保護を受けられるようになる点で商標と同じである。商号は商人の人的名称であり、法人において数個の営業を営んでいた場合でも1個の商号しかもてない。

【第三章 第4節 意匠権】

1.意匠法(1−32,2−60)
意匠法は、意匠の創作を推奨することで、産業の発達に寄与することを目的としている。意匠とは、物品の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合であって、視覚を通じて美観を起こさせるものをいう。意匠法は、特許法・実用新案法のように技術的創作を対照とするのでなく、美的形態に関する創作を対象とする。なお意匠法も、特許法などと同様に、IT化に応じた改正がなされている。

2.意匠登録の要件(1−33,2−61)
意匠権を付与されるためには、願書と図面を提出し意匠登録を受けることが必要である。意匠登録を受けるための要件は、?工業上利用性、?新規性、?創作非容易性を有し、?先願である、ことである。?〜?が必要とされる理由は、特許法と同様で、産業の発達のために保護する価値を有する意匠を選別することにある。
なお?については、同一の意匠のみならず類似の意匠も先願となり得る。よって同一または類似の意匠が先願されていると、後願の意匠は登録できない。

3.意匠権保護の諸制度(1−34,2−62)
(1)関連意匠制度
関連意匠制度とは、本意匠に類似する関連意匠についても独自の意匠権としての効力を認める制度をいう。
これは、従来の類似意匠制度のもとで本意匠の類似の範囲を確認するものに過ぎなかった類似意匠について独自の効力を認めることで、同一のデザインコンセプトに基づいたバリエーションデザインをより保護することを目的としている。

(2)部分意匠制度
部分意匠制度は、物品の一部にも独立の意匠権を認める制度である。商品のデザインの一部のみを模倣するような行為からも意匠権者を保護することを目的としている。

(3)組物の意匠制度
組物の意匠制度とは、2個以上の独立した物品からなる集合物に対して1個の意匠権を認める制度をいう。コーヒーカップとソーサのように全体を合わせることで統一的なデザインとなる意匠を保護することが目的である。