【第三章 第5節 商標権】

1.商標法(1−35,2−63)
特許法の対象である発明などは、産業上利用できる創作物であり、それ自体に価値がある。これに対して商業法の対象となる商標は、商品ないしサービスに使用されるマークにすぎず、それ自体には価値はない。ただ商標には、?他の物やサービスと区別する識別機能、?商品などの出所が同じことを示す出所表示機能、?商品の品質が同じことを示す品質保証機能、?公告機能などがある。よって、同一の商標を継続的に使用していると、商標は業務の信用を示すようになる。このような商標の独占的使用権を認めることは、商標権者の保護となるだけでなく、消費者にとっても商品などの品質を予想できるのでメリットとなる。そこで商標法は、商標の保護を図っている。

2.商標権の設定(1−36,2−64)
商標権は、特許庁に出願をし、審査を経て、商標登録原簿に登録されることで発生する。商標権者には、登録商標を独占排他的に使用できる専用権と、他人が登録商標の類似範囲の商標をしようすることを禁止することができる禁止件が認められる。禁止権の対象である類似の範囲は、商標自体の類似性とそれが使用される商品・役務の類似性と2側面から判断される。特許庁の審査基準によれば、商標の類似性は商標の外観、呼称及び観念のそれぞれを総合的に考慮することで判断するとされている。
商標権は、設定登録の日から10年間存続する。ただ特許権などと異なり、商標権は何度も更新登録できるので、保持し続けることができる。
業務上の信用の標章となった商標を期間経過後に誰でも自由に使用できるとすると、消費者が商品・サービスの内容を混同誤認して不測の損害を被る可能性があるからである。
なお、商標権は先願主義をとっているので他人が同一または類似の商標について出願していると登録できない。また出願に係る商標が、識別力を欠く商標(例えば指定商品または指定役務の普通名称や慣習商標、指定商品の産地・品質・原材料・効能等または指定役務の提供場所・質・効能等を表示するにすぎない名称等)は登録できない。
商標権者は、商標権侵害者に対して差止請求、損害賠償請求等を行うことができる。また、商標権侵害者は刑事罰の対象となる。

3.不使用商標・防護商標(1−37,2−65)
商標は、それ自体には価値があるものではなく継続的に利用されることで価値を生じるものである。よって長時間使用されていない商標には保護に値する価値がないといえる。そのため3年以上使用されていない商標に対しては、誰でも登録の取消を請求できる。
これに対して、商標は、継続して使用され周知性。著名性を獲得するごとに業務上の信用を標章としての価値を高めていく。そこで著名な商標については防護標章登録を受けることができ、非類似商品・サービスにまで禁止権を及ぼせる。

4.地域団体商標制度(1−38,2−68)
平成17年の商標法改正により、これまで全国的に知名度を有するなど、一定の要件を満たさなければ認められていなかった地域名と商品名からなる商標の登録について、より早期の段階で地域団体商標として登録を受けることが可能となった。これによって、地域名と商品名について、例えば、複数都道府県に及ぶほどの周知性を得るに至った場合には、地域団体商標としての登録が認められる。

5.類似の知的財産権(1−38、2−67)
業務上の信用の標章となる知的財産権には、商標権の他に、?不正競争防止法上の商品等表示、?商標・会社法上の商号に関する権利がある。
不正競争防止法は、商標法のように登録によって保護されるというのではなく、一定の類似的行為を不正競争として規制するというかたちを取っている。これに対して商号は登記という手続を経ることによって特別の保護を受けられるようになる点で商標と同じである。商号は商人の人的名称であり、法人において数個の営業を営んでいた場合でも1個の商号しかもてない。