4.更生手続開始の申立の審理(2−4)

4.更生手続開始の申立の審理(2−4)
更生事件についての審理は、他の倒産手続同様、口頭弁論を経ないでも行うことができる(任意的口頭弁論)。実際に、会社代表者のほか、広く、会社役員、大口債券者、労組の代表者などの審尋が行われ、口頭弁論は開かれていない。
更生事件の審理において、裁判所は自ら職権で必要な調査を行うことができる(職権探知主義)。
この調査に際して、必要があれば、調査委員を選任し、調査されることができる。
調査の結果、更生手続開始要件を欠いていることが判明すれば、裁判所は決定により申立を棄却する。これに対しては、即時抗告することができる。

5.更生手続開始決定(2−5)
裁判所は、更生手続開始原因が存すると認める場合には、更生手続開始決定を行う。これに大しては、利害関係人から即時抗告をすることができる。抗告が理由ありと認められれば、開始決定は取消される。
更生手続開始決定と同時に、裁判所は、更生管財人を選任し、更生債権の届出期間、調査期日、第1回関係人集会の期日を定めなければならない。
更生管財人の選任にあたっては、仮に旧経営者であっても、役員責任等査察決定を受けるおそれがないと認められるものであれば、更生管財人に選任することができる。
開始決定は、直ちに、官報により公告され、知れている利害関係人に送達され、監督官庁等にも通知される。また、遅滞なく、会社、および登記、登録ある会社財産について、更生手続始の登記がなされる。

6.更生手続開始決定の効果(2−6)
(1)会社に対する効果
開始決定があると、会社の事業の経営ならびに財産の管理及び処分をする権利については、原則的に管財人に帰属する。従って、更生手続が開始された後は、取引は、会社ではなく、管財人を相手とすることになり、構成手続開始後に、会社が会社財産に関してなした法律行為は、更生手続との関係では効力を主張することができなくなる。
なお、更生手続開始の日に会社のなした法律行為、または権利取得は、更生手続開始後にしたものと推定される。
しかし、会社の財産に関する行為以外の、組織法的、人的な活動については、会社が依然として権限をもっている。
ただ、この場合でも、財産関係に影響をおよぼすような行為は、禁止、または裁判所の許可が必要とされ、また、費用の支出は、管財人の権限に属するため、事実上、会社がなし得ない場合がでてくる。
(2)従来の法律関係に対する効果
更生債権(更生手続開始前の原因にもとづいて生じた、会社に対する財産上の請求権)および更生担保権(更生手続開始当事、会社財産の上に存する特別の先取特権、質権、抵当権、商法による留置権で担保されている範囲の、更生債権または手続開始前の原因にもとづいて生じた第三者に対する請求権)については、更生手続によらなければ、弁済をし、弁済を受け、その他免除を除いて、これを消滅させる行為は禁じられる(また、これらの債権は、裁判所に定められた債権届出期間の間に届けを出さなくては、更生手続にのることができず、失効することになる)。
ただし、そうした弁済禁止の原則にも、例外が認められている。例えば、会社を主要な取引先とする、いわゆる下請け中小企業の連鎖倒産防止のため、または、債権者数を減らして更生手続を円滑に進める方法として、少額債券者に対して早期弁済するためなどの場合、裁判所の許可を得て、弁済することができる。
また、更生会社を主要な取引先とする中小企業が、その有する更生債権等の弁済を受けなければ、構成会社の事業の継続に著しい支障をきたす場合にも、裁判所が弁済を許可できる。

(3)裁判上の手続に対する効果
更生手続が開始されると、会社は、事業を経営し、財産を管理処分する権限を失い、代わりに、管財人がそうした権限を有することになる。
そのため、以後、取引は会社ではなく管財人を相手としなければならないが、この管財人の権限に属するとされた範囲における会社の財産関係の訴訟についても、管財人を原告または被告としなければならない。したがって、すでに係属中の、更生会社を当事者とする訴訟手続も中断されることになる。
更生手続開始の決定があると、他の倒産手続の開始の申立はできず、すでに倒産手続がなされている場合、それが破産手続きであれば中止となり、民事再生手続、特別清算手続きであれば効力を失う。
なお、中止された破産手続きは、更生計画認可の決定があったときに効力を失う。
更生手続開始の決定があると、構成債権、更生担保権にもとづく、会社財産に対する強制執行、仮差押、仮処分、競売等、企業担保権の実行をすることができず、また実行されている手続は中止される。
ただ、更生に支障をきたさないと認められたときは、中止した手続の、続行を命じることができ、また、更生に必要があれば、中止した手続の取り消しがなされる場合もある。
更生手続開始の決定があると、決定の日から、更生計画の認可もしくは更生手続の終了までの間、または、決定の日から一年間は、更生債権または更生担保権にもとづく、会社財産に対する、国税徴収法による滞納処分などはすることができず、また、すでになされているこれらの処分は中止される。
ただし、この場合も、中止した手続の、続行・取り消しがなされる場合もある。
営業譲渡に関しては、基本的に更生計画にのっとった形で行われる。とはいうものの、現実には、更生手続開始後の非常にはやい財産の劣化を防ぐためにも、すばやく営業譲渡を行っていくことが求められる。そのため、更生計画案を決議に附する旨の決定がなされるまでの間は、管財人が裁判所から許可を得て、更生会社の営業の全部または重要な一部を譲渡することができる。