3.請負を基礎とする契約

請負契約とは、当事者の一方(請負人)が仕事を完成させることを約し、相手方(発注者)がその仕事の結果に対して請負人に

報酬を支払うことを約することによって成立する契約である。
今日、請負契約に該当する契約は、クリーニング、機会等の保守・修理、運送等数多くあるが、最も典型的な請負契約は建築請

負契約である。

4.委任を基礎とする契約
委任契約は、当事者の一方が法律行為をなすことを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって成立する契約である

。ただし、実行行為の処理を委託する場合も委任移管する規定が準用される。
実際には、1つの商人がこれらのうち2以上を兼ねていることも少なくない。そこで、保険業法、旅行業法、宅地建物取引業法
証券取引法等の、個別の業態に応じた法律において、これらについての規制が行われている。

5.寄託契約
寄託契約とは、受寄者が寄託者のためにある物の保管をする契約である。受寄者が目的物を受け取って成立する、要物契約であ

る。

6.保険契約
保険とは、同種の危険にさらされた多数の経済主体のそれぞれが、それぞれの統計的計算上の危機率に応じた出損をなすことに

より共同的備蓄を形成し、現実に需要が発生した経済主体がその備蓄された資金から給付を受ける方法で需要を充足する制度の

ことをいい、不確定リスクを除去・軽減を行うための共同の仕組みといえる。

7.知的財産権に関する契約
特許権・商標権などの知的財産権は、現代の企業活動上、大変重要な権利となっている。正当な知的財産権の保護は、各個人・

企業の投下資本回収、またさらなる知的進歩に大きく貢献するとともに、各産業の活性化、さらには知的財産そのものの市場の

発展にも繋がるもので、将来の経済を形作る不可欠な要素となる。

8.業務提携契約
消費社会の高度化によって、商品の多様化・高度化や流通市場の拡大化が進んでいる。このような環境の変化に伴い企業間の競

争はますます厳しさを増し、競争に打ち勝つ企業経営には様々な戦略が必要になってくる。企業の経営戦略としては、企業の大

規模化・多様化・合理化などが考えられるが、これらを実現する経営戦略手段の1つとして、業務提携がある。企業は会社を拡

大させたり、多様な分野に事業を広げたり、会社内のリストラを進めたりしているが、そのような流れの中で業務提携が行われ

ている。
業務提携の内容は、代理店・特約店契約、販売委託契約が特許権の実施許諾契約(技術提携)などを含めて、さまざまの型があ

る。

(1)生産業務の提携
各企業は、すべてを自前で提供するわけではない。もし、それを行おうとすれば人的にも金銭的にも、非効率的といわねばなら

ない。そこで、実際は、それぞれの企業同士で、ニーズに合わせて、製品・部品の生産・加工・供給に関して、頼りあうことに

なる。このときにそれぞれの製造業務を連動利用するために結ばれるのが、生産業務の提携である。相互に頼りあう関係で、一

定の期間、継続しなくては、提携とはいえない。
鄯 OEM契約
OEM(Original Equipment Manufacture)契約は、生産事業の提携の一類型であり、発注者のブランドで販売する製品を受注者に

供給させる契約である。
OEM契約には、発注者側は生産のノウハウのない分野の製品についても自社ブランドでの販売を行うことができ、不採算の際に

は容易に撤退できるというメリットがある。受注者側は売れ残りのリスクを負うことなく生産を行うことができるメリットがあ

る。ただし、消費者のブランドに対する信頼性を裏切る可能性があるという点、企業責任をあいまいにするという点では、長期

的に見たときに企業イメージにマイナスになるのではないかというデメリットも指摘されている。
また、OEM契約には、様々な契約内容のものがあるので、その法的性質を一律に定めることはできない。よって、OEM契約の法的

性質は、個々のOEM契約ごとに考慮され、特約のない部分には、類似の契約の規定が補充的に適用されることになる。
例えば、?発注者が、受注者仕様の製品を購入して発注さhの商標をつけるだけの場合は、売買契約的な法的性質を持つOEM契約

ということができ、特約なき部分につき、売買契約の規定が適用されることになる。また、?受注者が、受注者仕様の製品を生

産・納品して発注者の商標をつける場合は、請負契約的な法的性質を持つOEM契約ということができ、特約なき部分につき、請

負契約の規定が適用される。
?商標の管理
OEM契約では、発注者が自分の商標をつけて、自分の商品として販売する。そのため、商標の扱いが極めて重要となる。製品・

包装においての商標の表示の仕方を明確に規定して、受注者が発注者の指定した通りに商標をつけられるようにする必要がある

。また、受注者の商標の無断流用は明確にこれを禁止しなくてはならない。
?取引数量の決定
取引数量の毛低は、発注者・受注者の双方にとって、安定受注・発注の確保ができる反面、販売見込み違いによる在庫リスクが

生じる。そのため、取引数量に関しては、慎重を期す必要がある。
?発注者の製造物責任
OEM契約では、商標を所有する発注者も「製造業者と誤認させるような表示をした者」として製造物責任法(PL法)上の責任を

問われる可能性がある。
発注者は被害者に支払った賠償金につき受注者に求償することができるが、その旨を契約の際に明確に規定しておく必要がある


鄱 コンピュータソフトウェア開発の委託
現在、ビジネス上コンピュータは必要不可欠であり、それを有効利用した業務運営は、コスト削減や効率化への大きな近道とい

える。そのとき活躍するのが、便利なソフトウェアである。その中身は、自社で作る会社もあるが、人員や費用の面で、負担が

大きい場合が多いといえる。そこで、外部に託した形で、発注者の会社に合わせたソフトウェアの開発を委託するケースが増え

ている。このようにソフトウェアを外部に発注することをソフトウェア開発委託契約という。ソフトウェア開発委託契約も生産

業務提携といえる。法的性質は生産業務提携と同様である。
提携契約が求められるのは、例えば、会社内部の情報に比較的深くコミットする機会が多く、また、メンテナンス等の必要性か

ら、単に作るだけで終わらないことも多いことなどから、取引が長期的・継続的となる要請が強いといえるからである。
ソフトウェア契約委託契約に関しては、次のような事柄が問題となる。
?成果物たるソフトウェアの著作権
著作権については契約書面でしっかり定めることが重要である。関与度合いよりも、委託企業と受託企業の実施雨滴関係で決ま

り、現実には委託企業に帰属することが多い。
なお、著作権の帰属だけではなく、開発したソフトウェアの使用権をも定めておく必要がある。著作権が委託者に帰属するよう

に定めたとしても、受託者にそのソフトウェアの使用を自由に認めてしまっては、実質的には委託者の権利が十分に確保されな

くなってしまうからである。委託者と受託者の権利が十分に確保されなくなってしまうからである。委託者と受託者の権利を調

整するには、著作権と使用権の両者を同時に考慮する必要がある。
?ソフトウェア開発委託契約の業務範囲
完成後のメンテナンスや、発注企業の従業員への講習などのニーズも高く、実際どこまでが痛く範囲なのかについては、契約時

に明確にしておく必要がある。
?受託企業に開示された委託企業の情報の保持
委託企業のニーズにかなったソフトウェア開発のために、受託企業は委託企業の保有する営業秘密等と接しざるを得ない場合も

多くなる。そこで、機密保持条項を事前に契約で定めておく必要がある。
ただし、ソフトウェア開発に伴う、受託会社担当者の記憶に残るアイディア、ノウハウ、コンセプト等(いわゆる残留情報)に

ついては、守秘義務の対象から免除されることも多い。

(2)合弁契約
鄯 合弁事業と合弁契約
企業等が連携・共同して事業を営む形態には、民法上の組合、会社、その他の社団等の多種多様な団体が考えられる。このよう

な共同事業企業体の形態の1つに合弁事業がある。合弁事業の前提として締結されるのが合弁契約である。これは一般的に、比

較的少数の当事者が特定の営利事業を、共同で行うことを目的とした契約である。その主な目的は、合弁事業における資本・組

織・運営等に関する当事者間の合意である。
合同契約では、出資比率、役員比率、代表者の運出方法、組織形態(組合型・会社型、どういう会社形態をとるのか)、運営補

法、契約解消時の処置などが決められている。
合弁契約は、それによって設立される企業体の形態によって、大きく組合型(パートナーシップ)と会社型(株式・合名・合資

・合同の各会社)とに分けられる。前者の合弁事業には民法の組合に関する規定が適用されるが、後者の合弁事業には会社法

理論が適用され、その設立は会社の設立手続によらなければならな。したがって、後者の場合、合弁契約によって規定される事

項のうちのある部分は、設立される合弁会社の定款に規定される。
鄱 合弁事業における出資の問題
合弁事業に関しては、各出資者が運営に当たって、どこが主導権を取るかが問題になる。
この場合、合弁会社への出資割合で決まることが一般的である。株式会社形態のときには、全株式の51%以上を保有している

会社が、会社の全経営についての意思決定を担える。このような場合に、少数派が、不当に不利な立場に立たされないようにす

るために、少数派の利益に配慮した規定(業務執行上の拒否権の設定、一定数の取締役の確保)が設けられる。
ちなみに、出資率を同じにすることは、責任の不明確化につながると考えられ、基本的に行わない。

9.電子商取引
電子商取引とは、広く情報通信技術を用いたビジネスをいう。
例えば、電子商取引では電子メールを用いて商品の発注・受注が行われる。またホームページを用いて広告をすることができる

。さらに最近では、銀行取引や決済をインターネット上で済ませることも可能となった。
電子商取引では、新しい技術や発想が多く用いられる。このことから、電子商取引はビジネスのあり方を大きく変え、さらに新

しいビジネスチャンスを拓くものだといえる。
一方、ITの急速な発展に法的なルール整備が追いついておらず、何か問題が発生した場合に既存の法的ルールを適用しても妥当

な解決を図ることができない場合が多くある。また、気が付かないうちに加害者や被害者になってしまう可能性もある。そのた

め、当事者が安心して電子商取引に参加できる法環境の整備が求められている。

(1)インターネットを利用した電子商取引の特定とそれに伴う法的問題
鄯 契約の成立
契約成立時には、申込と承諾という双方の意思表示が合致することが必要である。電子商取引においても、この点は変わらない

。そして、インターネットを利用した契約では、「隔地者間の契約」として、承諾の発信時に契約が成立するのが原則である(

発信主義)。
しかし、発信主義は、郵便を利用するような時間のかかる制度を前提に設けられた制度であり、瞬時に情報の伝わる電子商取引

には不向きな制度といえる。
そこで電子消費者取引法が制定され、電子消費者契約における契約成立の時期について、到達主義を採用した。すなわち、電子

メール等で契約の承諾通知を行う場合、承諾の通知が申込者の元に届いた時点で契約が成立することになる。
鄱 店委任者との取引
未成年者の法律行為は、法定代理人の同意がない限り取り消される可能性がある。特に、電子商取引では相手の姿が見えないの

で、突然、未成年を理由に契約が取り消されて多大な損害を被る危険がある。
業者としては、まず、きちんと相手の年齢を確認するべきである。年齢確認のプロセス(画面上に年齢確認のフォームを設ける

べき)などを経ていれば、仮に未成年者がうそをついた場合でも、詐術とされる可能性があり、取消のリスクを軽減することが

できる。
また契約の後、相手が未成年者であると判明した場合、業者の側は保護者に対して、追認するか否かの確答を催告することがで

きる。この催告に対して確答がない場合は、追認したものをみなされることになる。
鄴 電子商取引における錯誤
キーの誤操作で、消費者が思わぬ取引をしてしまうトラブルが頻出している。そこで、消費者保護のために、電子消費者契約に

おいては、事業者が操作ミスを防止するための措置を講じていない場合には、消費者に重過失があっても、消費者側からの錯誤

無効の主張を認めている。
鄽 電子商取引と各種消費者保護法
電子商取引にも、消費者保護法、特定商取引法等、各種の消費者保護のための法律が適用される。
・店舗側が契約締結の勧誘をするに際して、消費者に対して不実告知(重要事項について事実と異なることを告げる)、不利益

事実の不告知等がなされ、消費者が重要事項を誤認して契約を結んだ場合、消費者はその契約を取消せる。
消費者契約法において定型化された消費者に不利益な事項(特に損害賠償の定めについて事業者に不当に有利で消費者に不当

に不利なもの)に該当する場合には、その契約は無効となる。
・インターネット広告について一定事項の表示義務が課され、誇大広告が禁止される。
・カード決済が行われ、これが割賦販売の割賦購入あっせんに相当する場合、同法の適用を受け、販売時には書面(電子データ

でもよい)を消費者に交付しなければならない。
酈 本人確認の問題
改ざんの有無を確認し、また本当にその人によって作られたものかを確認するために用いられるのが電子署名(電子認証)と呼

ばれるものである。一般的な取引では、この確認を印鑑やサインで行ってきた。しかし、電子的なデータにおいてはこうした方

法をとることができない。電子署名はこれを可能にしようとする技術である。
電子署名については、「電子署名及び認証業務に関する法律」が制定され、電子署名によって署名された文書については、真正

な成立が推定されることとされている。