【第三章 第3節 実用新案件】

1.実用新案権(1−31,2−59)
実用新案とは、産業上利用できる考案で、物品の形状、構造または組み合わせに関するものをいう。考案とは、自然法則を利用した技術的創作をいう。特許権の対象である発明との違いは、技術の高度さにある。実用新案権は、特許制度からもれた技術的創作について独占排他的な権利を付与することで創作意欲を高め、もって産業を発展させることを目的とする。つまり実用新案制度の存在意義は、特許制度の補完にある。
考案は出願後極めて短期間で実施され、実施される期間も短いことから、これに対する制度は小回りがきくものが望ましいといえる。そこで実用新案法は、特許法と異なり出願後形式的審査のみで実用新案権の設定登録を行う早期登録制度を採用している。また、実用新案権の存続期間も10年と短いものになっている。
形式的審査のみで設定登録を行うと保護に値しない考案にも独占排他的な実施権が認められる可能性がある。そうした事態を避けるために、実用新案法は、種々の規定を置いている。具体的には、権利行使後に登録が無効となった場合に、損害賠償責任を負わせるなどがある。