【第2章 会社の運営】2.会社の計算

1.会社の計算(1−10,2−38)
計算関係(営業・財産状況の把握と損益の計算)においては、さまざまな利害が衝突する。すなわち、株式会社では、株主は利

配当請求権に基づき、より多くの配当を得ようとする。一方、会社債権者保護のためには、会社財産の流出を防止し、財務状

況を性格に把握してリスクを減少させる必要がある。さらに、会社経営者は、少しでも業績をよく見せようとする。こうした利

害衝突のなか、企業の財務処理を適切に行うのは、なかなか容易なことではない。そこで、会社法では、そうした利害を調整し

、適正な財務処理を図るため、さまざまな詳細な規定が定められている。
もちろん、会社の財産状況や、会社の財産状況や、会社の損益状況を明らかにすることは、会社の経営・発展にとっても重要な

意味を持っている。それは、自己が現在おかれた状況を把握することが、企業活動の基礎をなすといえるからである。
鄯 計算規定
計算規定は、?経営のための企業の財務状況の把握と開示、?債権者のための財務状況の開示、?剰余金の配当における配分可

能性の算定、という機能を担っている。
a 計算書類の作成手続
計算書類等は、取締役・執行役(会計参与設置会社においては取締役及び会計参与)が作成する。もっとも、実務上は取締役の

委任を受けた経理部長等が作成する。
作成された計算書類等は、監査役設置会社監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社

を含み、会計監査人設置会社を除く)においては、監査役の監査を受けなければならない。
会計監査人設置会社においては、?計算書類及びその付属明細書については監査役委員会設置会社においては監査委員会)及

び会計監査人の監査を受けなければならず、?事業報告及びその付属明細書については監査人(委員会設置会社においては監査

委員会)の監査を受けなければならないものとされている。
なお、取締役会設置会社においては、代表取締役が取締役会に提出し、その承認を受けなければならない。その上で、取締役が

計算書類等を定時株主総会に提出または提供して、原則としてその承認を受けなければならない。総会終了後、会社は遅滞なく

貸借対照表(大会社ではこれに加えて損益計算書)を公告しなければならない。
鄱 企業会計原則
計算書類は、会社法の規定に基づいて作成されなければならない。しかし、会計は複雑多岐な事項に渡り、すべてを会社法で定

めることはできない。そこで、会社法は、必要最小限度の事項についてのみ規定し、それ以外の事項については「一般に公正妥

当と認められる企業会計の慣行」に依拠するものとされている。
この公正なる会計慣行として第一に考慮すべきものとして、企業会計原則をあげることができる。企業会計原則は、会社法や税

法等で求められる信頼性ある会計実務の確立のために設定された企業会計処理基準であり、一般原則、損益計算書原則、貸借対

照表原則及び注解からなっている。
鄴計算書類と財務諸表
財務諸表とは、企業会計において、企業の財務内容や、損益の計算を把握し、利害関係人に公開するために作成される様々な書

類のことをいう。会社法上の概念である計算書類よりも若干広い概念であり、また、事業報告は含まれない。
鄽 情報開示
a 会社法上の情報開示規定
会社法上は、株主や債権者の利益を確保するために、次のような情報開示規定を定めている。
 ?取締役会設置会社における定時株主総会の召集通知への計算書類等の添付
 ?定時株主総会承認後の公告
 ?計算書類等の備置き・公示
 ?株主及び会計k債権者の会計帳簿閲覧権
b 連結計算書類制度
従来、旧監査特例法上の大会社であり、かつ証券取引に基づく有価証券報告書を財務局に提出している株式会社及び委員会設置

会社(みなし大会社である委員会等設置会社を除く)には、商法上も証券取引法上の連結財務諸表制度と同様の制度が導入され

ていた。
会社法も原則としてこれを承継し、会計監査人設置会社は、各事業年度にかかる連結計算書類を作成することができることとさ

れた。また、事業年度の末日において大会社であり、かつ証券取引法に基づく有価証券報告書内閣総理大臣に提出しなければ

ならない会社は、連結計算書類(連結貸借対照表連結損益計算書連結株主資本等変動計算書、連結注記表)の作成を義務付

けられた。