【第2節:株式会社のしくみ】1.株式会社の設立

1.株式会社の設立(1−4,2−32)
株式会社の設立は、?営利社団法人としての実態の形成と?法人格取得という2つの側面を有する。株式会社においては、資本充実・維持が要請させるので、設立は厳格な手続によってなされる。
実態の形成は、?根本規範(定款)の作成、?人的基礎の確立(社員の確定)、?物的基礎の確立(出資の履行)、?組織の確立(機関の選任)の順で行われる。
実体が形成されると、本店の所在地において設立の登記を行う。そして、登記によって法人格が取得され、設立手続が完了する。

(1)株式会社の設立
株式会社を設立する方法としては、?発起設立、?募集設立、の2つがある。発起設立は、発起人(1人でも可)が会社設立時に発行する株式の総数を引き受けて会社を設立する方法である。募集設立は、発起人が会社設立時に発行する株式の一部を引き受け、残りの株式について株式を募集して会社を設立する方法である。

(2)株式会社の設立方法
鄯定款の作成
株式会社の設立には、まず定款の作成が必要になる。定款は、発起人が作成する。作成された定款(原始定款)は公証人の認証を受ける必要がある。この認証がないと、定款の効力は発生しない。
定款は、電子的記録によって作成することも出来る。
定款に記載する事項として、絶対的記載事項、相対的記載事項、変態設立事項、任意的記載事項がある。
 a 絶対的記載事項
 絶対的記載事項とは、基本的かつ重要な事項であり、この記載がなければ定款は無効である。
 ?会社の目的…会社の事業目的
 ?商号…会社が自己をあらわすために用いる名称
 ?本店の所在地…最小行政区画(市町村/東京特別区)により記載
 ?設立に際して出資される財産の価額またはその最低額…記載された額以上の財産が現実に出資されなければならない。
 ?発起人の氏名または名称及び住所…記載された者が発起人となる
 b 相対的記載事項
 必要に応じて記載すればよく、仮に記載しなくとも定款自体は有効である。ただし、記載をしなかった事項については、その効力は認められない。
 変態設立事項は、相対的記載事項にあたる。
 c 変態設立事項
 発起人の権限濫用が生じやすく、また会社に対する重大な損害を与えかねない一定の事項については、変態設立事項として、特別の規制に服するものとされている。
 d 任意的記載事項
 法の定める記載事項以外であっても、任意に記載することができる(任意的記載事項)。強制法規や公序良俗に反しない限り、記載どおりの効力が生じる。
鄱株式の引受けと払込み
定款が作成されると、株式の引受けと払込み(出資の履行)が行われる。発起設立と募集設立では、流れが異なる。
 a 発起設立
 発起設立では、発起人が設立時に発行する株式総数を引受け、遅滞なく発行価額全額を払い込まなければならない。払込みは、あらかじめ定めた銀行または信託会社(払込取扱金融機関)において行う。
 b 募集設立
 募集設立では、発起人が引き受けなかった株式について、引き受けてくれる出資者を募集する。
 引受を希望する出資者は、株式の引受けを申込み、発起人の割り当てを受けることで引受人となることができる。引受人は、払込期日までに、払込取扱金融機関において、その全額を払い込まなければならない。
鄴機関の選任
引受け・払込みによって、財産的な基礎が確立すると、機関が選任される。
発起設立では、発起人の引受け・払込みの後、発起人が取締役などを選任する。募集設立の場合は、払込後に召集される創立総会にといて選任される。
鄽会社は、登記した時に、法人格を取得して設立する。登記は、本店所在地を管轄する法務局(登記所)で行う。登記事項は、商業登記簿に記載され、公開される。設立登記は、法律の定める手続が終了した日など、一定の日から2週間以内に行わねばならず、怠ると過料に処せられる。

(3)設立に関する責任
設立関与者には、それぞれ一定の責任が課せられる。これは、会社設立における不正行為を防止し、また関係する債権者や株式引受人を保護する趣旨である。
a 資本金充実責任
従来、設立の際には、定款で定められた発行株式総数について、引受・払込がなされることが必要とされ、これを欠けば設立無効の原因になるので、そうした事態を回避するため、発起人・取締役等に重い資本充実責任が課されていた。
しかし、会社法では、定款で定めた「設立に際して出資される財産の価額又はその最低限」が出資されれば、出資の全部が履行されなくても会社の設立が認められることになったため、資本充実責任が緩和され、発起人などの引受・払込・給付担保責任は廃止された。そして、会社法上、発起人等の負う資本充実責任は、財産価格填補責任のみになっている。
b 任務懈怠責任
発起人や設立時取締役・監査役は、設立中の会社の機関として、善管注意義務を負う。この義務に違反した場合には、会社に対し、連帯して損害賠償責任を負わなければならない。
c 会社不成立の場合における発起人の責任
会社の設立手続が設立登記に至る前に挫折し、会社が設立しなかった場合を、会社の不成立という。会社不成立の場合、発起人は、会社の設立に関して行った行為について連帯して責任を負う。すでに支出した会社の設立に関する費用も発起人の負担になり、株式引受人に負担させることはできない。
d 議事発起人の責任
発起人でないのに、株式募集広告等に自己の氏名または名称・会社設立を賛助する旨の記載・記録することを承諾した者は、議事発起人として、発起人と同一の責任を負う。ただし、擬似発起人が発起人としての任務を有しないので、任務懈怠責任は負わない。