【第1節:会社制度】

1.持分会社と株式会社(1−1,2−29)
会社法上の会社は、会社内部で社員の個性が重視される持分会社と、社員の個性が重視されない株式会社とに大別できる。さら

に、持分会社は、合名会社・合資会社合同会社の3種類に分けられる。
持分会社では、原則として、各社員が業務執行権を有し、会社を代表する。すなわち、各社員は直接、会社経営に携わる事がで

きる。

2.さまざまな持分会社(1−2,2−30)
(1)合名会社
合名会社は、最も組合に近い会社形態である。合名会社は、少人数で、比較的小規模は事業を行うのに適切な会社形態である。

その一方、多数の人が集まって、大きな事業を行うには、不向きである。
合名会社では、社員は直接無限責任を負担する。すなわち、会社が債務を支払うことが出来ない場合、社員は自己の財産をもっ

て、その全額を支払わなければならない。
(2)合資会社
合資会社は、合名会社と同じく、小規模な事業を行うための会社形態であり、合名会社の変形形態である。合資会社と合名会社

との違いは、出資を限度とする責任のみを負担する有限責任社員の存在にある。つまり、合資会社は、合名会社の社員と同様に

直接無限責任を負う無限責任社員と、未履行出資額につき直接に有限責任を負うに過ぎない有限責任社員からなる。
(3)合同会社
合同会社は、会社法によって新たに認められた形態の会社である。対外的には社員の有限責任が保障され、対内的には組合的な

定款自治および社員の有限責任が認められる点で有限責任事業組合(LLP)に類似する。しかし、構成員課税が認められず、出

資者は配当のほかに社員としての報酬を受けることができ、合同会社自身に法人格が認められるという点に違いがある。
債権者の信頼は社員の個性に対して向けられているため、持分会社は、相互に信頼関係を有するものの間で共同して事業を行う

場合に適した企業形態である。

3.株式会社(1−3,2−31)
株式会社は、大規模な事業を行うのに適した会社形態である。また、さまざまな工夫によって、利害関係人のバランスをうまく

調和させる仕組みが整っている。そのため、株式会社は、最も進化した会社形態だと評価される。
なお、会社法の制定により有限会社法は廃止され、株式会社と同一の規模の下におかれることになった。もっとも、既存の有限

会社については経過措置により、そのまま存続することが可能である。(特例有限会社)。

(1)株式会社の基本的特徴
鄯 株式制度
株式会社では、細分化された均一な単位である株式という形式で出資を募る。
鄱 間接有限責任
株式会社では、より一層、出資を促進するため、投資家によって危険な無限責任を避け、間接有限責任を採用している。間接有

限責任とは、株主は、会社に対してその有する株式の引受価格を限度とする有限の出資という責任を負うだけで、会社債権者に

対しては何らの責任を負わないとする原則である。
鄴 資本制度
株式会社が間接有限席にを採用したので、会社債権者は、株式から債務の弁済を受けることができない。それゆえ、会社債権者

は、会社財産から弁明を受けるほかない。そこで、会社財産をいかに十分確保するかが、重要な問題となる。
株式会社では、この会社財産確保のための制度として、資本金の額に相当する一定の純資産が常に確保されていなければならな

いという制度(資本制度)を採用した。すなわち、株式会社においては、資本金という一定の枠を設け、この資本金の額に見合

う財産の拠出を求め(資本充実の原則)、かつその会社財産が資本金の額を下回るまで流出することがないようにしている(資

本維持の原則)。
鄽 最低資本金制度
株式会社では、資本制度によって会社財産確保が図られるが、資本の枠自体が小さすぎれば、結局、会社債権者を保護するとい

う本来の目的を果たすこともできない。そこで、最低資本金制度が導入され、株式会社の資本の額は1000万円以上であるこ

とが必要とされていた。また、有限会社の資本金については、300万円以上とされていた。
しかし、個人が起業する際、最低資本金制度は大きな障害となりかねないことから、創業者が株式会社・有限会社を設立する場

合において、経済産業大臣の確認を受けた確認会社については5年間に限り、最低資本金の定めが適用されない特例が認められ

ることになった。そして、会社法においては、最低資本金制度が廃止され、この特例制度が一般化された。